
空気ノ機械ノ尾ッポ 原 寿彦




この作品を書こうと決めたのは7月上旬。踏みならされた
堅い地面に無数の穴があけられていたのを見たときの事です。人差し指が丁度入る位の穴はそこら中、無数に口を開けていた。その穴は蝉の幼虫が這い出てきた時に出来たものでした。一歩進めば2〜3個の穴を踏んでしまう。この足下にどれだけの生物がいるのだろう…アスファルトを歩いているときには分からなかった。これがきっかけ。
次にカフカの「城」という作品。
カフカの唯一未完の作品で、カフカが知人に「城の話」と言っていたから、タイトルを「城」とし、少々の手直しをして作品として世に出されたものだそうです。内容はというと…「城」はそこに見えているのに、そこにあるのに、なんやかやと理由があって中に入れず。やがて主人公Kの意識から薄れゆく。「城」は行きたいのに行けない場所から、いつしか目の前に当たり前にある建造物になる。行くことが出来ないとあきらめたつもりもないし、そのきっかけもなく、忘れたつもりもない。ただ毎日を過ごしていく。---あくまでも、これは私の勝手なあらすじ…解釈、内容です。(念のために書き添えますが、もちろん、カフカという巨匠ですから批評家達のあらすじは解釈は全く違います。)今回まで、幾つかの公演を行い、幾つかの台本を書き、幾つかのモチーフを探し続け…。その度に「城」は気にかかり、その度に「城」の単行本を手にしていました。今回ようやく…本当にようやくです。これでもう「城」を手にすることもないでしょう。

さて、次に地球空洞説。
これは、蝉の話を書く上でもっとも夢のある説だったので取り入れました。「地球空洞説」(hollow Earth theory)。私たちの住むこの地球が、中身の詰まった球体ではなく、ピンポン球のように中が空洞であるという説。その空洞には小太陽があり、美しい植物が青々と育ち、4mくらい大きな人が暮らしているという話し。実際見に行ってきたことがあるというひともいる。なんとも不思議でSFチックな話だけれど、天文学者、測地学者などが真剣に研究した内容です。
アイザック・ニュートンの万有引力の法則により、地球の中に地球はありえないと証明され、この説は退けられていきました。

そして最後にもう一つ。あのチリ鉱山の救出劇。チリ共和国のアタカマ州コピアポ近郊のサンホセ鉱山にて現地時間2010年8月5日に坑道の崩落事故がありました。今回の作品を書き始めた頃の事です。崩落により33名の男性鉱山作業員が閉じ込められたと聞いたときは、背筋の凍る思いをした。こんな台本書いているから?いやいや、そんなことがあるか…この本を書こうが書くまいが事件は起こっていたに違いない…でも、でも、もしもの事があったらどうしよう…。33名の男性の安否を毎日のように祈り、彼らの救出方法が試行錯誤される度にハラハラしてニュースを見た。お願い!必ず全員救出してちょうだい!!10月13日、全員があの鉄の塊に乗せられて救出された。彼らが全員無事に救出されたから、今回の公演は誰も悲しむことなく出来るのだと感謝いたします。
Chichichi, lelele, los mineros de Chile!
さて、この4つ。繋がるようで繋がらないような…。これは観てからのお楽しみです。劇場にておまちしております。
著・松川晃子

空気ノ機械ノ尾ッポ 座長 原 寿彦